東京水引の代表アーティスト中村江美によるアートワーク「URO」が、福島県・喜多方の染型紙「会津型」を体験できる直営店「TSUMUGI」に展示されました

東京水引の代表アーティスト中村江美によるアートワーク「URO」が、福島県・喜多方の染型紙「会津型」を体験できる直営店「TSUMUGI」に展示されました。

Artist Statement

 樹木の幹に自然と生まれる「うろ(空洞)」は、損傷や腐朽の痕跡でありながら、同時に小さな生き物たちの住処や生命の循環を支える場でもあります。森の中にひっそりと佇むその空間は、外界から隔てられた秘密の聖域であり、再生と包摂の象徴でもあります。本作「URO」は、そのような「うろ」の内包する温かさと力強さにインスピレーションを受けて制作されました。

 本作品の主材には、使用後の紙パッケージと未利用の間伐材から生まれたアップサイクル紙糸「TSUMUGI」による水引素材を用いています。また、糸を紡ぐために用いられているスピンドル技術を現代的に応用し、独自の加工を施すことで、伝統工芸としての水引の枠組みを拡張しています。

 この試みは、日本美術において長らく重視されてきた「もののあはれ」や「余白の美学」に通じる感性を背景としています。たとえば桃山期の陶芸に見られる金継ぎのように、本作は傷や不完全さを「再生の美」として肯定し、それを未来への物語として結晶させるものです。また、本作に通底するのは、現代における「循環する美」の可能性です。環境倫理学やエコ・アートの思想においても、素材の来歴や制作過程は単なる物質的な背景にとどまらず、倫理的・象徴的な意味を帯びた「物語」として再構成されます。

 捨てられるはずだった素材が、新たな形で再び誰かの心を包み込む存在へと生まれ変わる――その姿に、私は持続可能な未来へ向けた美術の役割を重ねています。この作品が、観る人にとっても心の“うろ”となり、同時にこの場所が、日々の中にそっと潜む安らぎと再生の気配を感じていただける場所となることを願ってやみません。

2025.04.23
中村江美(東京水引代表)

Title: URO
Year: 2025
Materials: Upcycled mizuhiki made with “TSUMUGI” paper yarn, spindle-processed
Size: W80 × H120 × D30 cm
Artist: Emi Nakamura (Representative, Tokyo Mizuhiki)
Production Support: San-Oike Co., Ltd. / Matsuura Sangyo Co., Ltd.

 

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紙資源や間伐材から生まれた紙糸や、福島県・喜多方の染型紙「会津型」を体験できる直営店「TSUMUGI」を4月23日(水)より会津若松市内で営業開始

~全国22の企業・団体で明治時代築の古民家をアップサイクルして、伝統技術と地球環境をつなぐコンセプトストア第1号店~

一般社団法人アップサイクル(所在地:大阪市、代表理事:森原 洋)は、紙資源や間伐材を紙糸にアップサイクルするプロジェクト「TSUMUGI」において、染織工房れんが(所在地:福島県喜多方市、代表:冠木 昭子)協力のもと、福島県喜多方市に江戸時代から伝わる染型紙「会津型」の体験や、機織りや縫製といった繊維商品の製造工程を見学できるコンセプトストアを4月23日(水)より会津若松市にオープンします。

“会津型”の伝統技法と地球環境を、次世代に紡いでいくためのコンセプトストア

 一般社団法人アップサイクルは“現代および将来の世代のために持続可能な社会の実現”を掲げ、日清紡グループのニッシントーア岩尾株式会社やネスレ日本をはじめとする参画企業・団体により設立され、資源や食品残渣のリサイクル率向上を推進し、新たな価値を生み出すことを目指しています。

 プロジェクト「TSUMUGI」はスーパーマーケットの店舗や参画企業のオフィス、自治体の環境啓発施設を中心に回収した紙資源と、山林の手入れから発生する未利用の間伐材を紙糸に生まれ変わらせる取り組みです。“地球環境と伝統技術を次世代につむぐ“コンセプトで加賀友禅や大島紬、会津型といった全国の伝統工芸とコラボレーションした製品を開発してきました。

 このたび、福島県会津若松市に、全国初となるコンセプトストアをオープンします。江戸時代に福島県・喜多方で製造され東北一円に広がっていた染型紙「会津型」をはじめとする紙糸でつくられた製品を購入できるだけでなく、糸紡ぎや機織り機、ミシンといった製品ができるまでの工程や、「会津型」の型彫りや色さしといったものづくりを体験することができます。

 店舗改修にあたり一般社団法人アップサイクルに参画している内の22企業・団体が、壁材や床板といった内装材から販売商品、サービスに至るまで、技術を結集して制作した、まさに“アップサイクル”を体現するコンセプトストアになっています。一般社団法人アップサイクルは、地球環境だけではく、伝統技術の継承や後継者育成といった取り組みを全国に発信していくことを目指していきます。また、プロジェクトに賛同するパートナーも募集しています。

プロジェクト「TSUMUGI」について

 プロジェクト「TSUMUGI」は、使用後の紙資源や未利用の間伐材を紙糸に生まれ変わらせる取り組みです。紙糸は、天然繊維ならではの柔らかさと、軽量性、吸放湿性が特徴で、まるで自然の中にいるようなやさしい肌触りを感じることができます。しっかりとした縫製で、みなさまに長く愛用してもらえるようMade in Japanならではの技術が詰まっています。「TSUMUGI」という名前には、わたしたちと地球や社会・地域コミュニティを紡ぐ象徴として手に取っていただきたいという想いが込められています。

 

店舗概要

名 称:TSUMUGI

所在地:福島県会津若松市七日町9-2

営 業:10時~17時(定休日:月曜、火曜)

※お盆・年末年始は休業