ART & EXHIBITION 2025

循環する素材を、アートへ。— URO AT TSUMUGI

循環する素材を、アートへ。— URO at TSUMUGI

使い終えた資源や未利用資源を、循環するアートへ。2025年、中村江美によるアートワーク「URO」を、アップサイクル紙糸「TSUMUGI」から生まれた水引素材を用いて制作しました。作品は会津若松のTSUMUGI直営店に展示されています。

「うろ」という、再生を内包するかたち

樹木の幹に自然と生まれる「うろ(空洞)」は、損傷や腐朽の痕跡でありながら、小さな生き物の住処にもなる場所です。本作では、その空間が持つ包摂性や再生のイメージを、水引の線と重なりによって表現しました。

紙資源と間伐材から生まれた水引素材

主材には、使用後の紙資源や未利用の間伐材を紙糸へアップサイクルする「TSUMUGI」の素材を使用。紙糸を水引として扱い、スピンドル技術を応用した加工を重ねることで、素材の来歴そのものを作品の一部として取り込みました。

循環する素材を、空間の記憶へ

完成した「URO」は、福島県会津若松市のTSUMUGI直営店に展示。素材開発、伝統技術、地域、アートが交差する場所で、循環する素材の可能性を空間作品として提示しています。

作品情報

URO
2025
Upcycled mizuhiki made with “TSUMUGI” paper yarn, spindle-processed
W80 × H120 × D30 cm
Artist: Emi Nakamura
Production Support: San-Oike Co., Ltd. / Matsuura Sangyo Co., Ltd.

東京水引の代表アーティスト中村江美によるアートワーク「URO」が、福島県・喜多方の染型紙「会津型」を体験できる直営店「TSUMUGI」に展示されました。

Artist Statement

 樹木の幹に自然と生まれる「うろ(空洞)」は、損傷や腐朽の痕跡でありながら、同時に小さな生き物たちの住処や生命の循環を支える場でもあります。森の中にひっそりと佇むその空間は、外界から隔てられた秘密の聖域であり、再生と包摂の象徴でもあります。本作「URO」は、そのような「うろ」の内包する温かさと力強さにインスピレーションを受けて制作されました。

 本作品の主材には、使用後の紙パッケージと未利用の間伐材から生まれたアップサイクル紙糸「TSUMUGI」による水引素材を用いています。また、糸を紡ぐために用いられているスピンドル技術を現代的に応用し、独自の加工を施すことで、伝統工芸としての水引の枠組みを拡張しています。

 この試みは、日本美術において長らく重視されてきた「もののあはれ」や「余白の美学」に通じる感性を背景としています。たとえば桃山期の陶芸に見られる金継ぎのように、本作は傷や不完全さを「再生の美」として肯定し、それを未来への物語として結晶させるものです。また、本作に通底するのは、現代における「循環する美」の可能性です。環境倫理学やエコ・アートの思想においても、素材の来歴や制作過程は単なる物質的な背景にとどまらず、倫理的・象徴的な意味を帯びた「物語」として再構成されます。

 捨てられるはずだった素材が、新たな形で再び誰かの心を包み込む存在へと生まれ変わる――その姿に、私は持続可能な未来へ向けた美術の役割を重ねています。この作品が、観る人にとっても心の“うろ”となり、同時にこの場所が、日々の中にそっと潜む安らぎと再生の気配を感じていただける場所となることを願ってやみません。

2025.04.23
中村江美(東京水引代表)

Title: URO
Year: 2025
Materials: Upcycled mizuhiki made with “TSUMUGI” paper yarn, spindle-processed
Size: W80 × H120 × D30 cm
Artist: Emi Nakamura (Representative, Tokyo Mizuhiki)
Production Support: San-Oike Co., Ltd. / Matsuura Sangyo Co., Ltd.


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